厚川昌男さん
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厚川昌男さんは直木賞作家「泡坂妻夫」の名でもよく知られていました。
小説家に贈られる直木賞と奇術家に贈られる石田天海賞、おおよそどちらの分野でも国内最高峰と思われる賞を受賞しており、「厚川昌男賞」というご自身の名前を冠した奇術分野の賞もお作りになった素晴らしいお人です。
この方の作品集が東京堂出版から出ています。どれもまさに独創的なアイディアが活きた作品となっています。
専門書や雑誌などに厚川昌男さんの名前を見ることはありましたが、僕がこのお人の小説家としての名を知ったのは中学生の時でした。
しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)
泡坂 妻夫
後輩の家に遊びに行ったときに「見せてもらいました」
僕はそのとき見せられたマジックにも驚きましたが、そのような本が小説として完成されていることに深く感動したのです。
小説というのはその本の中だけで完結するものですが、この本は終盤にかけて読者に「ある事」を気づかせます。そして気づいた瞬間、自分が手にしている本は「本物」となります。
まさに悪魔的な巧妙さでマジックと小説が融合していたのです。
愛好家にとって多大な影響を与えた人物に、心からご冥福をお祈り申し上げます。